番外編|いつまでも、あると思うなピンセット(tweezers)

「いつまでも、あると思うな親と金」という諺がありますが精密ピンセットも気がついたら生産中止になっていることがあります。先の太いピンセットにはそれほどこだわりませんがもし今使っている精密ピンセットが急に使えなくなったら大問題です。
今年の春に顕微鏡関係者が集まった時のこと。お世話になっている先生が「自分が気に入っているピンセットが生産中止になっていたので残っていた30本のうち20本を買った!」というのです。ちなみに1本が約7,000円。それを聞いて私も自分のピンセットについて見直してみることにしたのでした。(2019.9.2)

【精密ピンセットの形状と材質】

標準的なピンセットは先端の形状からNo.1〜7番などとなっています。素材もSTAINLESS=INOX(?)、ANTIMAG=NON-MAG、TITANなどの種類があります。同じ番号でもメーカーによって形状も微妙に異なっていたり、素材の違いは磁性、腐蝕性、硬さなどに影響してきますがメーカーごとに秘密の配合になっているようです。
ちなみに優秀な精密ピンセットメーカーの多くはスイスの会社です。

【手に馴染むピンセットは限られてくるもの】

私が日常最も使っているのは主にNo.5、7タイプですが、それぞれ3〜4種類くらいは買いました。似たようなものでも先端の形状や触った時の硬さの感触などから頻繁に使うものはだんだん絞られてくるもので、No.5はVIGOR・STAINLESS=TW−705(現在はINOX?)、No.7はVIGOR・NON−MAG(TW−607)になりました。
もちろんその他のメーカーや同じメーカーの違う素材と比べて選んだわけではなくたまたま店頭で見て買ったのでもっといいものがあったかもしれません。でも使い慣れたピンセットの予備は絶対に必要。同じものを探して心中しようか、それともこれを機会にFONTAXやDUMONTも試してみようかなどと思ったのですが…。

【私が使っていたピンセットはまだあるか? そのお値段は?】

良いものに強いこだわりをもっていてもお値段も重要な要素です。過去に使ったピンセットで本当に使えるものはどんなに安くても3,000円以上で5,000円くらいは当たり前、でも1万円を超えたら諦めるというのが私の感覚。
私が使っていた先の2本はまだありましたが素材違いの同社製品でもお値段は6,000円弱から8,000円くらい。チタンはモオーッとします。
最初に書いたのはFONTAXのTaxalの話しです。この会社は2010年に廃業したようで在庫限りのようです。

【お値段優先・多少の硬さの違いは許容範囲】

VIGORにはカーペンター(CARPENTER)というシリーズがありました。非磁性合金で硬さは標準のステンレス(INOX)よりは柔らかくノンマグより硬く耐腐食性もありとのこと。
でも決め手はお値段です。生産中止につき在庫限りでお安くなっていました。とりあえず購入して使ってみましたが先端形状も今までと変わらず硬さも違和感なし。残っているうちにと買い足しました。ちなみに楽天市場で3,000円前後です。

【残りの人生でピンセットは何本必要だろう?】

No.5も7も10数年以上は使ってきたもの。あと2本ずつあれば死ぬまで足りるかとも思いましたが、老眼が進めば手先もおぼつかなくなって先端を痛めるようになるかもしれません。念のため4本ずつ購入しました。
ピンセットは使っていけばだんだん柔らかくなっていくもの。1本ずつ卸すのではなく並行して使おうかと考え始めた今日この頃です。

【安くたっていいものもある!(2019.10.7)】

顕微鏡でお付き合いのある先生のお宅にお邪魔した時のこと。たまたま置いてあったピンセットを触ってみたら感触もなかなかよく先端も結構合っている感じ。そしてこれが何と300円台。先の高級品と比べると人によって硬さに不満があるのも分かるし、実体顕微鏡でみると先端の作りもちょっと甘いのですが研げばそろえられるレベルのもの。無理に高いものを買わなくてもいいんじゃないのって思いました。
まあ両方あればもちろんCARPENTERを使いますが、クリーニングでレンズペーパーを扱うときは私もこのピンセットを使うことにしました。

【余談:ピンセットはオランダ語】

日本人はヨーロッパ諸国の単語を聞くと無意識に英語だと思い込んでしまうことが多々あると思います。ピンセットともその1つで私自身もこれがオランダ語と知ったのはけっこういい年になってからです。言われてみればピンセットが最初に日本に入ってきたのは蘭学と一緒ってことですかね。
こういうウンチクを紹介するのはあまり好きではないのですが、英語で会話をしていて通じないこともあると聞けば一応書いておこうかということで…。