これで使える顕微鏡・上級編(12):像のクオリティを決めるのは対物レンズ

顕微鏡の肝は対物レンズです。良いものになれば顕微鏡全体のコストに占める割合も大きくなります。
だとすれば一番ていねいに書かねばならないと思って書きはじめましたが、書いているうちにこのページをご覧の方にはオーバースペックのような気がしてきて書き直しました。
理屈だけ知っていても実際に見て満足できなければ意味がありませんし、いいレンズが欲しくなっても実際に買うのは意外にたいへんです。(2020.5.5~/2022.12.29改)

【レンズの種類:アクロマート、フルオリート、アポクロマート】

詳しい話しは日本顕微鏡工業会のページにお任せしますが、大きく上記の3種類があります。順に性能が上がり、それに伴いお値段も上がります。
購入する時にそこが価格に反映されているかは見るべきところです。

【開口数=N.A.】

レンズのレベルの目安になるのは開口数で大きいものほど性能が良いと考えてください。
10倍の対物レンズを例にすると、NikonS型、G型などに標準でついているものはNA=0.25です。これは理科系の大学生の実習などに使われているレベルです。次世代オプチフォトシリーズのCFPlanはNA=0.3で大学等の標準研究レベルという感じでしょうか。さらにアポクロマートではNikonNCF、Carl Zeiss共にNA=0.45です。
以前、藻類の小さな構造を観察するのに63xNA1.40と100xNA1.30を比較したことがありますが対象を同じサイズにしたときには63xから拡大したものの方が解像力は上でした。
注)これは明視野観察の原則で暗視野観察ではあえてN.A.の小さなものを選ぶべきことがあります。

【レンズの状態が重要】

ガラスが割れていれば論外ですがカビなら拭き取れることもあり。よほど酷い衝撃を与えて軸がずれるなどしていなければ中古品も使えると思います=というか私自身は新品のレンズを買ったことがありません。
かなり前のことですが、カタログ価格70万円のレンズが中古で驚くような値段でアップされていたので即お店に電話して取り置きを頼んでチェックさせてもらった時のこと。倒立顕微鏡の油浸で使われていたらしく、そのオイルが入り込んでいてせっかくのレンズをダメにしていたことはありました。
だいぶ経ってから別の中古品を買いました。

【販売店が語るいいお客さん】

販売店ではお客さんから「観察していてよく見えない」という声を聞くそうです。さらに「新しいのは性能が上か?」と聞かれたら「もちろん上です」と答えるそうです。
この言葉に嘘はないのですが見えない理由の大半は使い方を間違っているからとのこと。90点の顕微鏡性能を30点に引き下げて使っているユーザーが95点の顕微鏡にステップアップしても見えないことに変わりはないでしょう。ここでも無駄な税金が使われているのです。

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