これで使える顕微鏡・上級編(11):全体を支えるボディについて

顕微鏡でもっとも重要なのは対物レンズです。この性能で見える限界が決まります。その性能を活かすためのベースとなるのがボディです。中級編まではシンプルな明視野観察を基本としていましたが、位相差、偏光、微分干渉も希望するならシステムとしてそのボディが対応するかどうかを確認しておくことも必要になります。ここではボディに不可欠なパーツについてお話しします。(2020.5.5~/2024.3.19改)

【粗微動装置1:一軸タイプ】

粗微動装置については滑らかに動くことに尽きます。古いものではギヤが壊れている場合があります。面倒でも修理できればいいのですが無理なものもあります。入手時点でのチェックは不可欠です。
これはNikonL-Keのギヤで左はオリジナルが割れてしまったもの。金属製のギヤがたまたま手に入ったので交換しましたが根性のある顕微鏡仲間は3Dプリンターで作っています。

【粗微動装置2:二軸タイプ】

NikonS型には上記と同じ同軸タイプの他に粗動と微動が分かれたものがあります。こちらは金属部品だけで構成されており圧倒的に耐久性が上とのことです(私が信頼する顕微鏡屋さん・談)。
私は動くものを追い回すので同軸の方が操作しやすいというメリットがありますが、長期的に使うのであればこちらの方が安心でしょう。
G型も金属性ですがアルミなので当然S型よりは落ちるとのことでした。

【フォーカス合わせと撮影:ステージ上下vs鏡筒上下】

フォーカスを合わせるには対物レンズ先端と対照の距離を調整することになりますが大きく2つのタイプがあります。昔の顕微鏡はほとんどが鏡筒を上下させていました。これらは比較的軽量なので持ち歩きには便利です。ただ撮影しようとカメラを取り付けると重さに耐えられずに下がってくることがあります。私の経験としてはOlympusHSにTG-6なら大丈夫でしたがマイクロフォーサーズは止めておきます。落ちてこなくてもバランスが悪く倒れそうで怖いです。
最近ではほとんどの顕微鏡はステージの上下でフォーカスを合わせるので問題ないかと思いますがバランスの問題は残ります。持ち出さず置きっぱなしにするならカメラに対して十分な重さのものが安心です。

【ステージ1:動きとタイプ】

ステージも一番大事なのは滑らかに動くかどうかです。分解できレバグリース交換で滑らかに動くようになるでしょう。
またXYのダイアルがどこにあるかも観察に影響します。最近の顕微鏡は大半がステージ下方に出ているものが多くなっていますがNikonS型の時代では横に出ているかステージ上にとなっています。操作上は横タイプがいいと思います。
スライドガラスを押えるクランプも見ておきましょう。押えが効かないのはもちろん強すぎてスライドガラスが欠けるのも困ります。
顕微鏡によっては回転ステージもあります。必要に応じていろいろな種類を検討してみてください。

【ステージ2:ステージ表面】

できればステージ面のきれいなものがいいですね。表面がザラザラなものはスライドガラスを傷めます。恥ずかしながら私のステージはS型もオプチフォトも中古の粗悪品です(大根で言うならおろし金、それも鬼おろしレベルです)。
これには幅広セロテープを貼って対応しています。いつかは買い換えようかと思いながら実用上問題を感じずに30年近くが経ちました。またテープ貼りにはメリットととして常にカバーガラス部分がステージから浮いていることがあり貴重なプレパラートの裏側を傷めにくくなります。

【内臓照明のトラブルはLED工作で対応】

古い顕微鏡でトラブルの可能性が高いのが内蔵電源で修理の効かないことも多々あります。ただハロゲンなどのランプはとても暗いため私が使っている顕微鏡はすべてLEDに交換しています。
オプチフォトではランプハウスに放熱板つきLEDを組み込んでいますし、S型やG型ではアルミ板に張り付けておくだけです。
ただし厳密な色温度や演色性については要検討事項です。顕微鏡ではハロゲンが絶対という人もいますが消耗すれば色も変わるので話半分ですね。LEDは価格、寿命、光量などを考えて選ぶことが重要です。

【発展性=部品の互換性など】

一台の顕微鏡にいろいろつぎ込んだけれどさらにもう一歩進めようと思ったら対応していなかったということがあります。買い換える気がなければ将来の使い方を調べておいた方がいいでしょう。

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